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三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
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婆さんの前歯

今、一人暮らしなんですか?
寂しくないんですか?
老後の事とか心配なんじゃないですか?
50も過ぎて一人もんともなると周りからそんな声を掛けられても不思議じゃないよな。
前にも話したが、俺は離婚経験が3回ある。
1回ってのは最近では、そう珍しい事でもない。
でも、3回ってのは、俺もあんまり聞いた事がない。
だからといって自分に何か大きな欠点があるってわけでもないと思う。
ただ、他人より頑固でわがままな所は、多少あるかもしれないが。
俺と同世代の知り合いの女性で一度も結婚経験の無い人がいる。
それどころか、彼女は男と付き合った事も無いという。
寂しくないんですか?
なんて訊けないなと思っていた。
それは、どうしても自分の尺度で考えてしまうからだ。
でも、彼女の表情を見ていると実に活き活きしている。
好奇心が頭をもたげ慎重且つさらっと訊いてみた。
寂しくないんですか?
一瞬、沈黙が走った。
ヤバい、傷つけちゃったか?
彼女は、穏やかな表情で口を開いた。
そりゃあ寂しいと思った事はあるよ。でもね、毎日仕事が出来てご飯も食べられるし自分の住む所もちゃんとあるでしょ。テレビで好きなドラマも観れるし偶に映画だって観に行くし。この歳になると色々心配してくれる人もいるけど周りが思っている程、自分を不幸だなんて思っていないの。毎日生きてる事が楽しいって思ってるからね、私。
参った。
俺とは器が違う。
下らん質問をしてしまった自分が恥ずかしい。
そうなんだよね。
生きてる事って楽しい筈なんだよね。
凄く単純な事なのにどうして忘れちゃうんだろう?
もう、だいぶ昔の話になるが、俺は女や借金の事でぼろぼろになっていた時期があった。
そんな時に一人のホームレスの婆さんと知り合った。
深夜の歌舞伎町の外れにある公園のベンチで何をするでもなく腰を下ろしていた俺がよっぽど惨めな姿に映ったのだろう。
しみったれた顔してなんだい、若いのに。
聞いてやるから何があったのか言ってみな!
一通りのいきさつを一つ一つああ、そうかいと何処の誰かも分からないのに婆さんは頷いてくれる。
全部吐き出したと見た婆さんは言った。
あんた、贅沢なんだよ。良い事があったら悪い事がある。悪い事の後には良い事がある。それが、人生ってもんだよ。良い事ばっかりが続くと思ってんじゃないよ。
そう言ってにっこり笑った婆さんの前歯が無いのを見て俺も笑った。
生きてるって楽しいなって俺の心に確実に刻まれた時の事を想い出した。
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