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お年玉

不思議なもので1月というのは、12月の喧噪の後という事もあるのかもしれないが、妙に静まり返った深夜が自分を見つめ直す時間を与えてくれているような気がする。

年が明けて一息ついて、さあ今年はどうするんだ俺?みたいに。

どうやらこういう気持ちになるのは、自分だけではないようだ。

っていうか、新年明けましておめでとうございますの明けましての部分が、昨年は終わったよって意味だからそうなるのは当然なんだが。

で、大抵暫く連絡を取っていなかった友人や知り合いから、たいして意味がなかったり、今年こそはこうしたいんだみたいな決意表明を聞かされたり、みたいな電話が必ずあるのが1月であったりもする。

今年も例外に漏れず数件の電話があった。

直接会いに来るには遠すぎる、でもメールじゃ味気ない。ラインなんか論外だ。

離れていても声が聞ける、言葉を交わしあえる。

正月明けて泥のように深い眠りの中にいた俺を誰かがしつこく呼んでいる気がして電話をとった俺の耳に懐かしい声が響いた。

店のオープンから数年間出演していた或るパンクバンドのヴォーカリストのUだった。

一回り年下のくせに俺の事をおめぇとかあんたとか、相変わらず喧嘩口調が得意な最高の友人と俺が勝手に決め付けている奴でもある。

想い出話はどうでもいいから、今のお前とこれからのお前の人生語りやがれと側から聞いていたら喧嘩にしか聞こえないやり合いを1時間あまりした後で、1曲歌ってやるから何がいい?と聞いてきたので、じゃあ、中島みゆきの「糸」歌ってくれと言ってみたんだ。

奴がこの曲を歌えるのかどうかなんて知らないが、なんとなく絶対歌えるという確信めいたものがあったのと、この曲は、男女の仲がテーマのように聞こえなくもないが、もっと大きな人間どうしを歌ったものとしても受け取れるので、俺とUならこの曲かなって感じでのリクエストの積りでもあった。

束の間の無音状態を経てアコギの音が聞こえ始めた。

そして奴が歌い始める。

届く。

こんな小さな電話のスピーカーどうしなのにしっかり届きまくって泣きそうだ。

歌の力、音楽の力を改めて痛感させられた。

最高のお年玉を奴からもらうとは夢にも思わなかったよ。



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