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恐ろしい生霊

以前にも何回か夢の話をしたけど夢というのはほんの少しの時間で記憶が消えてしまうものだと言われている。
確かに俺もそう思う。
それを克服するには目が覚めたら直ぐに今見た夢の記憶をメモする習慣を付けるといいなんて話を聞いた事がある。
俺はこの夢のメモを数回書き留めた事がある。
だけどそれはその夢が凄く面白かったので何かのアイデアとして役立つかもなんて思ったからだ。
でも習慣付けるなんて事は出来無かった。
というか最初からそんな気は更々無かったけど。
夢は夢でいいと思うのが当たり前だとも思うしね。
そうすると3日程前に見た物は一体何だったんだろう?
メモを取ったりしていないのに鮮明な記憶として残っているあの出来事は。
俺は自宅のソファーでいつの間にか眠ってしまったようだ。
ふっと目が覚めたのはそこに人の気配を感じたからなのかもしれない。
おかしい、何故か数年前に別れた彼女が目の前に居るじゃないか。
じっとこちらを見て何か言おうとしているのが分かる。
俺はどうにもこの状況を把握出来ないままでいたようだ。
呆然として言葉が出て来ない。
すると今度は聞き慣れた同居する彼女の声がする。
えっと気を取られて視線を戻すとそこにはもう誰の姿もないんだ。
おかしいなぁと思いながらもまた横になった瞬間、俺の顔から30センチ位の距離から見下ろすようにまたその彼女が現れたんだ。
そして今度は一瞬で消えた。
怖いとかそんな事を思っている暇も無かった。
それ位の数秒の出来事だ。
夢の記憶は時間と共に消えていくというのなら現実のようにはっきりと覚えているこれは一体何なのだろうか?
実は今から20年程前にも俺はこれと非常に似た体験をしている。
どう考えても夢とは思えない程リアルな場面が未だに脳裏に焼き付いている。
あの時も過去に別れた女性だった。
あまりにも鮮明なんだが物理的にも有り得ない筈なんだ。
だって鍵掛けてるんだから。
そう考えるとやはり生霊という物なのだろうか?
生霊というのは激しい感情が元になって発生する人から離脱した霊の事だ。
一般的には強い恨みや憎しみから起こると言われているがその逆も有るようだ。
20年前と3日前に現れた彼女達がもし生霊だとするのなら前者の可能性は皆無だと思う。
それは当事者の俺が言っているんだから間違い無い。
すると俺が今するべき事は何なのだろうか?
答えは見えているのだが一筋縄ではいかない事も見えている所が辛い。
結局、生霊とはどう転んでも恐ろしい物のようだ。
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