しかし、女の子っていうのは本当に不思議だ。
女は恋をすると変わるっていうけどそれは俺も何回も見て来たから分かるんだが。
だけどほんの数ヶ月見なかっただけで別人のようになっていたっていうのは初めてだ。
先日、ある女の子からこんにちはって声を掛けられたんだが俺は彼女が誰なのかまるで分からなかった。
こういうシチュエーションっていうのはちょっとスリリングでロマンチックで俺は嫌いじゃない。
何かが始まる予感がする時みたいに強烈な印象を刻み付けられる場合も多いものだ。
名前を言われるまで見当もつかなかったその女性は実は数ヶ月前にバンドの話をした人だった。
その時はちょっと俯き加減でおとなしくて若いわりにはちょっと地味かなという印象だったんだ。
ところが声を掛けてきた時の彼女は輝くほど綺麗で目のやり場に困るくらい魅力的に変身していた。
参ったぜ。
磨きをかけなければダイヤも光らないっていうけど原石がこんな所に居たとは俺の見る目も濁ってきたもんだ。
誰なんだ?彼女に磨きをかけたのは。
先を越されちまったぜ、畜生。
それもたった数ヶ月の間にだもんな。
ってな具合で男と女っていうのは複雑に絡み合う糸のようなもんでちょっとしたタイミングで恋人同士になる事もあればすれ違いでもう一生出会う事も無く終わってしまう場合もあるものだ。
だけど本当はそうじゃないだろうというのが俺の考えだ。
俺の大好きな映画でMADE IN HEAVENというのがあるんだがこの映画を観た時にやっぱりなと自分と同じ考えを持っていた人がいて嬉しくなったものだ。
多分、上映されていた時も全然話題にならなかったからDVDにもなっていないかもしれないな。
そこまで話したら気になるじゃないかって?
仕様が無いなぁ~、じゃあ大体の粗筋を教えてあげよう。
或る田舎町に大学卒業間近の青年が居るんだ。
彼はそんなに裕福でも無い何処にでもある極普通の環境で育ったんだが就職がなかなか決まらない。
幾つか面接もしてみたが生まれ育った自分の町には勤め先が無く、意を決して両親を残し仕事を探しに旅に出る事になったんだ。
そんな道中で大きな池の側を通りかかると大勢の人だかりが出来ている。
なんだろうと車を止めて覗き込むと1台の車が沈みかかっていて母親と幼い子供が溺れかかっているじゃないか。
子供の方は未だ車の中だ。
周りの人達は何も出来ずにただ見ているしかなかったんだが正義感の強いこの青年は迷う事も無く飛び込んで子供を車から引きずり出す事に成功した。
だが不幸な事に自分は沈んでいく車に巻き込まれて池の中に飲み込まれてしまう。
そして二度と浮かび上がって来る事はなかった。
これで終わりだ。
え~~ってそうじゃないよ。
終わりといっても彼の人生が終わっただけで話が終わった訳じゃあ勿論ない。
此処まではプロローグだ。
日本語で言えば本編に先立つ前置き部分、序章にすぎない。
先が気になるだろう?
気を揉ませつつ続きは次回のお楽しみだ。
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