昔からの知り合いのF君夫婦に会った。
この二人は傍から見ていると本当に仲が良いのか悪いのか丸っきり分からない。
その難解さの原因は病的とも思える程のヒステリー持ちの奥さんとどんな時でも優しくて大人しいタイプの旦那がくっ付いてしまった事にある。
奥さんも俺と二人で話している時なんかは少し神経質っぽいかなと思うくらいで人格的にぶっ壊れているみたいな素振りはまるで無い。
だがここに旦那が加わると態度から口調まで全てが一変するんだ。
旦那の一言々に尽く罵声を浴びせるんだよ。
これは他人の俺からするとあまり良い気持ちのするものではないしどうしても旦那が可哀想に見えて仕方が無い。
だが、もう15年以上夫婦を続けているので夫婦円満という事には違いないんだろう。
実は俺もこんなタイプの女性と数年間暮らした事がある。
そんな時に訪ねて来た友達からは俺はマゾなんじゃないかなんて言われた事もあるくらいだ。
だが、それは完璧に違う。
彼女の歳が大幅に下だったという事もあると思うが俺は彼女の強がる部分の裏をいつも見ていたんだ。
弱さや自信の無さや不安の裏返しだと見破っていたんだと思う。
だから全てを許す事が出来たんだ。
昔お世話になったSさんという老夫婦の家でもよくそんな光景を見かけた事を思い出す。
奥さんは典型的なヒステリー持ちだった。
えっ?そんな事で怒っちゃうんですか?みたいな場面に何回出くわした事か。
そんな時のご主人の行動は今もはっきり憶えている。
うん、うんと大人しく奥さんの罵声を浴びて、ある程度落ち着いたところで何も無かった様な表情でふっと外へ出るんだ。
そして30分位は帰って来ない。
若かった俺はそんなSさんを情けないなぁなんて思っていたりしたんだが今になってやっとその男らしさが理解出来る。
常に前面に立ち女性をリードする言ってみればアントニオ猪木タイプが男らしいと思う人の方が多いと思うが、全てを受け止めさり気無く女性を導くジャイアント馬場タイプに本当のダンディズムを感じてしまう俺にはやっぱり古典的な日本人の血みたいなものが流れているって事なんだろう。
PR