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三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
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貴重な待ち時間

あれっ、日記を書く積もりでパソコン開いたままいつの間にか気を失う様に眠っちまったみたいだな。
実は昨日は殆ど寝れなかったんだよ。
というよりも無理して寝なかったんだけどね。
理由は寝ないで病院へ行って来たからなんだ。
それも名前に大学病院って付いてるでかい所だ。
ああいう病院って早く行って受け付け済ましとかないとどれだけ待たされるか分からないっていうから俺みたいな生活サイクルの奴は寝ないで行くしかないんだよ。
自分が診察受けるんなら不眠状態ってのは何かと支障があるかと思うがまぁ今回は彼女の付き添いというか運転手みたいな役目で行ったんだ。
女性ってそれなりの歳になると男には無縁な病気が色々あるみたいでさ。
受け付けを済ましたのは朝の10時過ぎだったんだが1時間以上経ったのに一向に名前を呼ばれない。
こんなのはおそらく序の口なんだろうな。
なんて思いながら更に待つ事数十分、やっと彼女の順番が回って来たようだ。
そしてここからがまた非常に長い。
・・・・・・・暇だ。
暇すぎる。
携帯でもいじくってニュースとか観とけば暇潰しになるんだろうが此処は病院だ。
電源は落とすのがルールだ。
それにしてもさっきからやたらに視線を感じるな。
そうか、皆時間を持て余してるもんだからマンウォッチングに勤しんでいるわけか。
ならば俺もそれに習う事にしてみよう。
ふ~む、やっぱりこういう場所の空気は重い。
こういう所ってやっぱりそれなりに皆辛かったり苦しかったりするから来ているのは理解しているがそういうネガティブな空気を俺にぶつけるのは止めて欲しいよ。
実はさっきからずっと俺を睨み付けてる車椅子の爺さんが居るんだ。
体の弱ってる人に何見てんだよ、俺に何か文句あんのかとは言えないし困ったもんだ。
斜め前では婆さんが3人座っているんだがこの人達だけは妙に明るいオーラを出している。
多分此処に通う内に仲良くなったんじゃないかと推測出来る。
両脇の二人は杖を持っているのに中央の太った婆さんだけが短い筒の様な物を持っている。
だが両膝にはガチガチにサポーターが巻かれているって事はリハビリの最中って事かな?
なんて思っていると3人が立ち上がる気配だ。
っとその時シャキーンという音と共に中央の婆さんの短い筒が一気に伸びた。
ゲッ、折りたたみ式の杖かよ。
見とれている俺を尻目に婆さんのふん、なめんじゃないよって勝ち誇った視線が眩しい。
そんな中、一人の痩せた御婆さんに注目してみる。
白髪頭を思い切って短髪にしたようなボーイッシュなヘアスタイルがお似合いだ。
凛とした佇まいが品の良さを感じさせる御婆さんだ。
昔はこういうタイプの女性が実に多かったように思う。
穏やかな笑顔の中に一本芯が通っているというか背筋が伸びているというか。
要するに女性特有のしなやかさと強さを併せ持ったタイプだ。
自分の母親がそうなのでこういう老人を見かけるとついついダブって見えてしまうのは俺も人の子だという証なのかもしれない。
この御婆さんも随分苦労してきたんだなと察する事が出来るのはその手を見れば分かる。
か細い中にも刻まれた沢山の皺と青白く浮き上がった血管が全てを物語っている筈だ。
お待ちどう様という彼女の声。
ひたすら硬い椅子に座り続けていただけだが貴重な数時間を過ごせたような気がする。
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