赤信号、みんなで渡れば怖くない。
なんて、随分前に流行ったもんだが、最近凄く気になるのがチャリンコの信号無視だ。
信号に対してこれだけ従順に従うのは、世界中で日本人くらいのもんだが、流石にチャリに乗って携帯で会話しながら当然のように赤信号無視している奴を見ると轢き殺したくなる衝動に駆られる。
こっちが右左折の時なんか、本当に何回轢きそうになったか分からないもんな。
それで、実際に轢いちゃったら悪いのは車を運転している方で、前方不注意なんて言われちゃうんだから割に合わない話だよ。
さて、そんな今では誰もが普通に使うチャリンコって言葉だが、その語源って知ってるか?
君等の歳では当たり前に使ってるが、あれは族用語なんだぞ。
族と言っても勿論ひょうきん族じゃないぞ。
暴走族用語なんだ。
今から30~40年くらい前に頻繁に行われていた族系等の不良と朝鮮系の不良との抗争から生れたものなんだ。
って言っても朝鮮語での自転車の意味であるチャルンケからきているだけだけどね。
でも、そんな時代を知っている俺からすると喧嘩もろくにした事も無いような連中にチャリンコって言われる事にカチンとくるってのも何となく分かるだろう?
南北朝鮮の一方である韓国とは、やっと仲良くなれたけど、当時は北も南も同一視されていて物凄い差別があったんだ。
俺は、この差別、その中でも人種差別って言葉が死ぬほど嫌いだ。
族が暴れまわるより数年前、あれは、俺が未だ小学校3~4年だった頃の話だ。
友達は、大勢いたが、その中でも最高の親友と呼べるのが菊池君という奴だった。
通称キックだ。
キックの家は、うちの近所で時計屋さんを営んでいた。
俺達は、授業が終わると必ず一緒で散々遊んだ後にはキックの家へ行って彼の兄弟も交えてその日の遊び収めをするというのが略日課になっていた。
そんな或る日の事、彼の家族から自分達は、日本人じゃない、朝鮮人だという話を聞いたんだ。
俺にとっては、だから何?としか思えなかった。
キックは、何人だろうと親友だし彼の家族も大好きな事に何も変わりは無いと思っていたからね。
それで家に帰ってその事を家族に話したんだ。
そうしたら散々怒られたんだ。
もう、一緒に遊んじゃ駄目だし家に行ってもいけないってね。
その意味が、俺には全く分からなかった。
ただ悔しいだけだ。
翌日、俺はその事をキックに話したんだ。
勿論、彼も悲しい顔をしていたよ。
それから数ヵ月後、彼は俺に何の断りも無しに転校してしまった。
それを知って彼の家に行ってみると、もう、あの時計屋さんも消えていたんだ。
どうやら彼が朝鮮人だっていう噂がいつの間にか広がっていたらしい。
おそらく俺が学校でも誰かに話した事が原因だと思う。
そんな積りじゃなかったのに。
こんな別れはあんまりだよ。
キックやキックの家族が誰かに迷惑かけたって言うのか?
こんな事が、平然と行われていたんだよ、当時は。
人種差別っていうのは、される側じゃなくてする方に問題があるんだよ。
過去に何があったとかって、それは国同士の問題であって個人には、何の関係も無いだろう?
只単に排他的な小さな心が生む人として最も恥ずかしい行為が人種差別だと俺は思っている。
あれからずっとね。
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