年末というと忘年会だの何だのと酒を飲む機会も多い事と思う。
楽しい酒なら大いに結構だがたちの悪い酒で人間関係をぶち壊してしまう事もあるので酒癖の良くない人は注意が必要な時期でもあるかもしれない。
もう何年も会っていないが俺の親友でMという奴がいる。
こいつは俺が今迄出合った人間の中で最もと言っていいくらいに男気のある奴だ。
もう本宮ひろ志の漫画を地で行くような生き方をしてきた男で年下ながら俺もライバル視せずにはいられない強力なパワーの持主だ。
こいつと会う時は常に男は如何に生きるべきかなんていうガチンコ勝負的な話題で朝を迎える事が多かった。
だがこいつには俺が苦手とする部分もあった。
それは飲みだすととにかくしつこくなる所だ。
酒飲みっていうのはある程度の所迄行くと大抵の奴が同じ事を何度も言い出すようになる。
その話はさっきしただろうみたいにさ。
皆がよく使ううざいという言葉が最もマッチする状況かもしれない。
こっちも同じ調子なら未だ良いんだが俺の場合はそうはいかない。
実は俺には若い時のオートバイの事故による後遺症があって首に爆弾を抱えている様なもんなんだ。
こいつは或る一定の量以上のアルコールを注入すると爆発する仕組みになっているんだ。
だから付き合い程度の量なら良いがそれ以上は病院送りになる事を覚悟しなけりゃいけないんだよ。
そんな事情もあってそいつからの酒の誘いを断る事も少なくはなかったんだ。
奴と飲む時はほろ酔い程度なんて事は有り得ないからだ。
そんな或る日、またしても奴からの誘いだ。
翌日早かった事もあって断ると一旦電話を切った数分後にまた掛かって来るんだ。
そんなに話したい事があるのかと思って内容を聞くと殆ど中身が無い。
そしてそこから数時間、同じ話が延々と続くんだ。
向こうは飲んでいるから良いのかもしれないがこっちにとっては迷惑意外の何物でもない。
これが1回、2回なら未だいいがこんな事が何十回も続き流石に俺も奴を避けるようになってしまった。
入院覚悟で大酒飲みに行くか数時間同じ話を聞かされるかどちらかしかないんだもんな。
親友だから話が始まればどうしても聞いてやろうとなってしまう。
途中で電話を切ってしまえば済む事だが奴に対する思いやりがそうはさせてくれない。
そして、いつの間にか俺にとってはもう苦痛の方が大きくなってしまったんだ。
今でも親友だとは思っているが当分は会いたいとは思わないだろう。
俺と奴との間に酒が無ければ最高の仲なのはおそらくお互いが解っている筈だ。
だけどこっちにも事情があるんだよ。
俺が入院なんかして店に出れなければ迷惑が掛かってしまう人達が何人も居るんだよ。
いくら酒のせいであろうとそのくらいは解ってほしかった。
相手への思いやりを無くせばこんな事にもなりかねないから飲むとしつこくなるなんて言われている人は少しは注意しといた方が良いかもしれないよ。
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