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潤いの無い世界が生んだ怪物

秋葉原17人殺傷事件の裁判が行われているらしい。
その法廷での被告と弁護人のやりとりがネットで公開されていたので一応全部読んでみた。
弁護人は被告が事件を起こした背景には彼の母親の影響が大きいという事を印象付けたいようだ。
結果はどんな状況になったとしても死刑だと思う。
それでも原因、真相を明らかにするというのは被害者や遺族に対する礼儀でもあるし再発防止に少しでも役立てるという意図が有るからなのだろう。
裁判というのは攻める側と守る側が居て裁かれる者と裁く者が居る。
そして、罪の責任を負わせるか負わせないか、負わす場合はその程度も決める場所と単純に考えてしまうと流れ作業のように一見思えてしまう。
だけど事件が起こるまでの過程を浮き彫りにすることが非常に意味があると思わざるを得ない内容がそこにはあった。
原因は彼の人間性にある。
当然、悪いのは本人だという事に揺るぎは無い。
しかし、彼の人間性を作ったのは誰でもがそうなように幼い頃の環境に他ならない。
幼い子供は父親から逞しさを、母親からは優しさを教えられるというのが人間本来の極普通の姿ではある。
一昔前迄は磐石と思われていたこの形がいつの間にやら崩れてしまったのが現代の日本の家庭だ。
彼の言う事を鵜呑みにしたとすると母親は我が子の存在そのものを私物化し捻じ曲がった愛情を注いでいたように思える。
本人の意思は全く尊重せずに自分の思うままにコントロールする事が愛情表現になってしまっていたと思われるふしが多分に見える。
じゃあ、責任は母親にも有るじゃないかと決め付けるのは早計だと思う。
どうして母親はそんな姿勢で我が子に接したのかという所まで行き着かないと片手落ちという事になる筈だ。
この親子の関係は暴力的な部分も有るが虐待とは違うと思う。
お互いに親子の愛情は有ったと思う。
そして、とても気になる部分は彼の口から殆ど父親の話が出て来ない所だ。
少しは出て来るんだが非常に印象の薄い感じがするんだ。
ここに母親が極度に厳しくなった原因が隠されているような気がしてならない。
ならば責められるのは父親かとなると確かに責任分担は免れないとは思うがその背景が有る筈だ。
どうして父親が子供に強さと厳しさを教え、逞しくあるべきと導かなかったのか。
それはおそらくその事よりも優先しなければならない事が有ったからだと思う。
ここに悲惨な事件に至るまでの種があったような気がする。
家族を食わす為にそこまで余裕が無かったのかもしれないし自分の自由を尊重してしまったのかもしれない。
裁判というものがそんな根を穿り返すような所まで追求するものなのかどうかは分からない。
今日、俺が言った事は想像の部分が多分に含まれるから実際は全然違う所に根があったのかもしれない。
だけど、これだけは間違っていないとはっきり言える。
彼は潤いの無い世界が生んだ壊れた人間、怪物だ。
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