最近は深夜に爆音を聞く事が無くなった。
そう、暴走族が居なくなったのだ。
なんでも高齢化の影響だそうだ。
僅かに存在する暴走族の平均年齢も二十歳を超えているらしい。
中には30代も居るそうだ。
実は俺も深夜に爆音を鳴らしていた時期は有ったが族には入らなかった。
ただ、族の連中との交流は有ったので当時暴れていた連中が実はどんな奴等だったかという事は知っている。彼等は一人になると決して悪い人間ではなかった。
だが心は乾いていた。
一人じゃ寂しくて仕方が無い連中ばかりだった。
だが、これが人数が多くなればなる程そんな内に向かう気持ちを逆に外に向ける行動に出た。
自分の存在を世の中に知って貰いたくて仕様が無いんだ。
寂しさをそうする事でチャラにするしか方法が無かったんだと思う。
俺が家を出て一人暮らしを始めた頃、俺の部屋は奴等の溜まり場だった。
連中からすれば俺はもう完全に仲間な訳だ。
確かに楽しかったのは事実だが反面、俺の中に不安な気持ちが無かった訳ではない。
彼等が心根で純粋過ぎる部分を多分に持っていた事は分かっていたのだが自立心に欠けているのも見抜いていたからだ。
こいつらといつまでも付き合っていたら俺はいつまで経ってもガキのままだ、そう思ったんだ。
そして彼等の頭を張っていた奴がたまたま一人で遊びに来た時に俺は決別を告げた。
奴は予想通り荒れ狂って強烈なパンチを何発も見舞って来た。
だが俺は一切手を出さなかった。
皆に申し訳無いという気持ちも有ったのだがそれ以上に奴の目に光るものを見てしまったからだ。
お前も世間の連中と同じなのかという悔しい思いが涙に変わっていたのだと思う。
あいつらは今一体何処で何をしているのだろう。
皆少しはまともになったのだろうか。そうであって欲しい。
現代はこういった半端な連中が気持ちを外に向けて暴れるのではなく内に内に向けて引き篭もりになっている様な気がする。
どちらも一つの青春群像だと思う。
若い時は純粋な分だけちょっとした一言や出来事が引き金になって心に傷を負う事が多い。
大人はその癒し方を知っていても子供は知る術が無い。
これが外に向かうか内に向かうか自分自身で乗り越えるかの違いなだけだと思う。
最近の暴走族事情をニュースで知った時にああ、結局様相は違っていてもいつの時代も大した違いは無いんだと、ふと思ってしまった。
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