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昭和の名レスラー

すっかり人気が落ち込んで復活の兆しも見えないプロレス業界だがそんな暗いムードに追い討ちをかけるような出来事が起こってしまった。
昨日のニュースを観た人は知っていると思うがラッシャー木村が死んだ。
最近はプロレスの放送も地上波ではあまりやってないし若いファンも大分減ってしまったのでもしかして彼を知らない人も居るかもしれない。
少し説明しようか。
ラッシャー木村は元を辿れば国際プロレスという地味だが通受けするプロレス団体のエースだったんだ。
全盛期の得意技はパイルドライバー、日本的に言うと脳天杭打ちってやつと子牛の焼印押しとも言われたブルドッギングヘッドロック、あとは頭突きとクロスチョップだ。
このクロスチョップっていうのは有名なミルマスカラスのフライング式のとは違って飛ばずに立ったままで打ち込むやつなんだ。
はっきり言ってパイルドライバー意外はあまりかっこ良く無くてどん臭い技だ。
あんなのは俺でも出来る。
他団体の選手がド派手な技をどんどん繰り出すのにこういうマニアックなスタイルだから当然人気は無い。
しかし、国際プロレスには実力派の凄い外人選手が多く参加していた。
カールゴッチ、ビルロビンソン、バーンガニアやその後大ブレイクするアンドレザジャイアントの前身、モンスターロシモフなんかもそうだ。
だが、日本人選手があまりにも華が無かった為に一向に人気が出なかった。
そこで起死回生を狙って行われたのが日本初の金網デスマッチだ。
この金網の中で血みどろになるまで闘ってエースの座を掴んだのがラッシャー木村だったんだ。
国際プロレス崩壊後は浜口京子の親父として有名なアニマル浜口等とアントニオ猪木の新日本プロレスに殴りこんだんだが此処でプロレスファンなら誰でも知っているあの有名なこんばんわ事件というのが起こるんだ。
勢い込んでリングに上がった彼がマイクを掴み発した第一声がこんばんわだったんだ。
これは受けたなんてもんじゃなかったよ。
殴り込みを掛けておいてこんばんわって律儀に挨拶するとは誰も予想が付かなかったんだ。
国際プロレスの時はいくらエースって言っても弱小団体だから注目度も低かったがこのこんばんわ事件を切欠に彼は一躍スターレスラーの仲間入りをしたわけだ。
当時の新日本プロレスの視聴率は毎回20%を超えていたから反響もでかかったんだ。
そして、全日本プロレス、ノアと渡り歩いたわけだが晩年の彼の必殺技と言えば勿論マイクだ。
こんばんわ事件から引き継いだ独特の間をおいたマイクパフォーマンスはいつの間にかプロレス会場には無くてはならないものになっていったんだ。
プロレスには激しい部分と面白い部分があるんだがいつしか彼は後者専門になっていったのは時の流れでもあり仕方の無い事だ。
ファンは彼が元世界チャンピオンなのを知っている。
そんな彼が動かなくなった体でもリングに上がって何とかファンを楽しまそうとしているのは十分承知なんだ。
ファンはもう彼が強くないのは知っていた。
元気な姿が観れればそれで十分と思っていた。
鉄人と言われたプロレスの帝王ルーテーズは彼の事を実力では馬場や猪木より上と言っている。
不器用で地味な選手ではあったが昭和の名レスラーがまた一人消えたという悲しいお知らせではあった。
子供の時にサインを貰った事を今でも想い出す。
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