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別れと情

 これからの季節、新しい世界へ向かう人達も多い事かとも思う。
うちの店でも就職の為に実家に帰る者もいる。
言い変えれば別れの季節でもある。
人は人生において一体何回位この別れというものを経験するのだろう。
短い付き合いであれば感慨など感じないものだがこれが長くなればなる程別れは辛いものになる。
それはそこに情というものが発生するからだ。
この情というものは人間にとって大切なものなのだろうか。
今日はそんな話を少ししてみようと思う。
一番解り易いのが恋人と別れる時だと思う。
付き合っていた時はあんなに楽しかったのに何で別れなきゃいけないんだ、なんでこんな辛い思いまでして別々の道を進まなきゃならないんだって経験を持っている人も多いと思う。
別れの原因では価値観の相違というのが一番多いと思っている人が大多数とは思うが実はこれは間違っている。
凄く極端に割り切った冷たいかもしれない位の極論を言えば必要無くなったからだ。
人間は無意識の内に己の向上を目指している。
その向上の為に必要な時期を過ぎると相手に対して魅力を感じなくなるんだ。
そんな時に人は悩み苦しむ事になるんだ。
魅力という磁石が効力を発しなくなったので別の道に進もうとするのだがそこに今度は情という別の磁石が引き止めようとするんだ。
ここで道が大きく二つに別れる事になる。
恋人を断ち切って新たな道に進むか情を重んじて元の鞘に戻るかだ。
俺の意見を言えば明らかに前者が正しいと言い切れる。
勿論後者だって悪いとは思わない。
だけど、正しいとは明らかに言えない。
多くの人が先ず選ぼうとするのが後者だと思う。
後者の方が楽だからだよ。
俺も後者を選ぼうとした事は何度も有る。
この日記を書き始めた当初に恋愛の賞味期限は3年だという話をしたのを覚えているか?
その3年の中で恋愛感情とは別の意味での尊敬みたいな感情が育たなければ情しか残らないからいずれ別れる事になるみたいな話をした筈だ。
最近流行っている熟年離婚なんてのはその情だけで繋がれていた夫婦がお互いを見つめ直した時にとる行動だと思う。
別れなかった理由の子供が巣立ってしまえば情しか残らず尚一緒に夫婦で居る事に意義を見出せないから別れを選択するって事なんだろう。
これも無意識下に有る向上心の成すところだと思う。
別れというと痛みも伴うから誰もが敬遠したがるしマイナスのイメージの方が強い。
だがこの辛い別れを数多く経験すればする程、人間の器は拡がる事になるんだ。
別れの季節に君らに格言を送る。
別れから逃げるな、別れは君等の血となり肉となる。
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