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三軒茶屋HEAVEN'S DOOR
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一皮剥ける時

これは、誰にでも言える事だけど自分自身が大きく変わる時ってあるだろう?
実際は、日々少しづつでもみんな成長していくものだと思うけどそうじゃなくて、あっ、俺は今一皮剥けたかもって実感を感じる時の事だよ。
こういう時って実は或る意味痛みを伴う場合も多いと思うんだ。
痛みといっても肉体的な痛みじゃ勿論ないよ。
そうじゃなくて、恥ずかしい思いをしたり不安の中に飛び込むみたいな気持ちになったり怖いと思っていたものに敢て踏み込んだりとかそういう意味での事だけどね。
あれは小学4年生くらいの時だったと思うんだけど、それまでの俺は大人しすぎて居るのか居ないのか分からないような傍から見たらおそらく存在感の薄い子だったと思うんだ。
俺は、或る日、クラスのボス的存在だった奴に呼び出されたんだ。
呼ばれた理由は分からなかったが、おそらく虐められるんだろうと或る程度予想はついていた。
案の定、彼は意味も無く俺に腕立て伏せを命じたんだ。
それも学校の階段の踊り場でだ。
勿論周りには他の生徒もいる。
はずかしめだよ。
反抗する勇気も無い俺は、言われるままに腕立て伏せを続けるしかなかった。
何回やったかなんて憶えていないが、そんな姿を同じクラスの子達にも見られたのは辛かった。
そして、それに飽きたのだろうか、彼は、新たな命令を俺に下したんだ。
窓から首を出せと言うんだ。
その窓は、所謂何処にでも有る様な横に開くタイプのものじゃなくて上から一気に力を入れて閉めるギロチンみたいな奴だった。
躊躇する俺に彼の罵声が飛んだ。
殺られる。
ギロチンの刑は、嫌だ。
逃げたらもっと酷い目にあわされるのも分かっている。
残された道は、一つしかない。
振り向きざま、俺は、多少腰が引けていた分を差っ引いた残りの力を全て込めた拳を奴の顔面にぶち込んだ。
おそらく奴の選択肢に俺が反撃してくるというのは無かったのだろう。
不意を突かれた巨漢が顔面を覆って崩れ落ちた。
この一発で俺の人生は大きく変わったと今でも思っている。
そんな機会を作ってくれた彼にも感謝している。
なにしろそれまで本気で何かをするという意味も知らなかった俺に切欠を作ってくれたわけだからね。
この一件から俺の中で今迄に感じた事の無い何かがうごめき出したんだ。
自分自身に対する自信というか生きるエネルギーみたいなものかもしれない。
毎日が楽しい、生きてる事が面白いと思ったのもこの時からだ。
常に何かもやもやしたものに覆われていた自分が殻を破った瞬間だ。
皮被りがズル剥けになったようなもんだ。
こういう切欠って偶々と思うかもしれないが、本当は何処にでも転がっているものだと思うんだ。
要は、どう対処するかって事だと思う。
君の心が未だ皮を被っていたとしても大丈夫だ。
切欠は、必ずやって来る。
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