或る外国人ライターは、日本のヒットチャートに乗る音楽は耳を覆いたくなる程酷いが、アンダーグラウンドシーンには信じられないくらいに沢山の素晴らしいミュージシャンがいると言っていた。
そんな事は、お前に言われなくても分かってるわい。
それを全部引っくり返してやろうと思ってあーだこーだと色々仕掛けるんだが儘ならないからいつもいらついてんじゃないか、こっちは。
と言い続けて早21年。
お前等だってマドンナがレディーガガに替わっただけで何も変わってねえだろが!
と言いたい所だが、お子様むけの曲がべストテンの半数を必ず占める日本と比べりゃ向こうはやはり層の厚さが違い過ぎる。
ということで発想転換する事にした。
何年か前に韓国に行った時に生で聴いた韓国ロックを思い出す。
始めて聴いた音楽だったが、心が熱くなって涙が溢れそうになってしまった。
そこには、マドンナもガガもぶっ飛ぶくらいの音楽の真の姿があったように思う。
何に近いかと言われると非常に困るが、強いて言えば加藤登紀子のさとうきび畑のイメージに近いかもしれない。
淡々としているんだが物凄く力強いって感じかな。
べスト10に入ろうがどうしようが、そんな事は関係無い。
歌う側がいて聴く側がいる。
言葉も通じないその両者が、音楽という手段によって繋がり合う。
それをいとも簡単にやられてしまったら数字がどうのなんて拘っている自分が阿呆らしいってもんだ。
俺は、その瞬間のめり込んで包まれた。
ありがとう。
途轍もなく大切なものを貰ってしまったと思ったよ。
音楽は、例え10万人で聴いていようが、それが100人でも10人でも結局1対1なんだ。
ここに音楽の本質、真の姿がある筈だ。
ミュージシャンは、一人でも多くの人に自分の曲を聴かせたい。
だが、その対象が10人から100人、1000人と膨れ上がるに連れてビジネスが生れる。
そのビジネスの波に飲み込まれてしまえば只の人に逆戻りだ。
武道館で1万人、ドームで5万人ってそりゃ確かに凄い。
でも、道端で歌って一人を楽しませ感動させるってのも同じくらい凄いと思う。
或るバンドが路上でライブをするというので観に行った時の事だ。
いい調子だったのだが、警察が割って入り中止せざるをえなくなってしまった。
勢い付いていたそのバンドは、人がいない所でもいいからもっとやりたいという事で場所を移動したんだが、笑っちゃうくらいに本当に誰もいない。
だが、再開されたそのライブも絶好調だ。
まっいいか、俺一人でも、と思っていると何処からかホームレスらしきおばちゃんがやって来た。
そして一言、「あんたらなかなかいいじゃないか、きっと人気者になるよ。」と言って嬉しそうに座り込んだんだ。
こいつら凄いなぁってあの時も思ったよ。
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