８月１５日は終戦記念日か。
と言っても当然俺は戦争を経験していない。
俺の親父が十代から二十歳に向かう頃の出来事だ。
だけどその期間って本当は親父にとって青春の華やかかりし頃になる筈だったのにと思うと息子の俺が言うのも変かもしれないが悔しい限りだ。
そりゃあそうだろう。
思いっきり遊んだり恋したりって楽しくて仕方ない時期に予科練っていう軍隊予備軍みたいな所に行かされてたんだからな。
女の子といちゃいちゃなんてしようもんなら非国民扱いだからな。
それに比べれば俺達なんか天国で暮らしている様なもんだと思うよ。
両親から昔話をよく聞かされていたけど戦争中は本当に地獄だったそうだ。
空襲とか凄かったらしくて皆で防空壕で震えていた姿を想像したら俺の親もよく頑張って生き延びてくれたと思うもんな。
食生活も相当厳しかったらしいし。
俺なんかはまだそんなリアルな話を直接体験した両親から教えられたからその壮絶で悲惨な戦争というものがどんなものか大体は分かる。
だがそのもう一世代後に生まれた君達には想像の範囲でしか伝えられない事になる。
当然、君等の両親も戦争未体験な筈だし。
終戦から６４年経過したって事は今７０歳でも当時６歳だからもう一回り上の８０歳位じゃないと細かくは語れないんじゃないかな。
これがあと１０年すると９０歳になってぐっと数は減ってくる。
２０年後には１００歳の人を探さなければ戦争体験談は聞けないって事になる。
３０年後にはもう殆ど戦争体験を語れる人は居なくなるって事だ。
これは或る意味とても喜ばしい事ではあるけれど戦争の記憶を風化させてしまうのはとても危険な事でもある筈だ。
喧嘩でも人を傷付けたり傷付けられたりして痛みを知っているからもう止めようと思う訳だ。
経験が抑止に繋がっているんだ。
これが全く未経験だったりすると最近の若者が信じられない様な殺傷事件を起こしたりって事なんかに結びつくんだよ。
全てとは言わないが原因の一つには必ずなっている筈だ。
これを国に例えて考えてみてくれ。
大きな抑止力の一つが消えかかっているんだよ。
戦争の記録を沢山残しておく事も大切だ。
だが、君等も今のうちに爺ちゃん婆ちゃんの昔話をしっかり聞いておくのも物凄く大事な事かもしれないよ。
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